2017年1月18日水曜日

空っぽの檻と水仙

野毛山動物園のメスのアムールトラ「メイメイ」が2017年1月4日に老衰のために亡くなった。
息子にとって生まれて初めて見た本物のトラは、メイメイだった。自宅から一番近い動物園である野毛山には、季節ごとに動物たちに「元気かい? 」と、挨拶をするような気分でよく通っていたので、あのいつも見ていたメイメイがもういないというのが、なかなか信じられない。

私たち親子がメイメイに会ったのは、晩年の頃だったから元気に動き回っているというよりも、じっとしていたり、眠っていたりすることのほうが多かったように思う。

普段見ていたときには気づかなかったが、メイメイはお年寄りだったのだ。野毛山動物園で生まれて、20歳で亡くなったメイメイ。飼育下では15年が寿命なので長生きしたほうなのだという。野生を知らずに檻の中で一生を過ごしたメイメイ。メイメイの目には、私たち人間はどのように映っていたのだろうか? メイメイの訃報を受けてから、いろいろなことを考えながら過ごしていた。

息子が『かばくん』という動物園が舞台の絵本を読みたいとせがんで、寝る前に読み聞かせをしていたときに、そうだメイメイにお別れの挨拶に行こうと急に思い立った。

翌朝、家の庭に咲いている水仙の花を数本摘んで、オモチャを包んでいた青い包み紙を赤い紐で結んで持っていくことにした。お店で買った花よりも、なんとなく心がこもっている気がして。水仙の甘い香りは、凍てついた空気にも優しく、なにより美しかったメイメイにふさわしい花だと思ったのだ。
息子は、家から動物園まで大事に花束を手に持って行った。ベビーカーに乗っても離さず、坂道ではベビーカーから降りて、花束を持って長い長い坂を頑張って歩き切った。

空っぽの檻を見て、「メイメイちゃんいないねーねてるのかな? 」と息子。献花台に花を捧げ、遺影のメイメイちゃんを見て何かを察したのか、ちょっと寂しげな表情をしていた。遺影の前に座って、手を合わせて「メイメイちゃんありがとう、安らかにねむってね」と伝えることができてよかった。
メイメイがいたバックヤードのガラス張りの部屋には、飼育員からの寄せ書きや贈られた花とメッセージがたくさん置かれてあり、メイメイがみんなから愛され大切にされていたことが痛いほど伝わってきて、うれしかった。そして、本当にメイメイがもういなくなってしまったんだ、もう会えないんだという実感がわいてきて、私は寂しくてそこに長くとどまることはできなかった。
バックヤードの廊下には、メイメイが元気だったころの楽しげな姿が大きな写真で飾られているので、ぜひ多くの人に見てほしい。

メイメイの献花台は、野毛山動物園のトラ展示場横に1月22日(日)まで設置されている。


2017年1月7日土曜日

新年早々、洗濯物に張り切りボーイ

そういえば、息子はずり這いを始めた頃から、洗濯物を干すピンチが大好きで、床に転がっているのを手に持ち揺すって音をジャラジャラ鳴らして遊んでした。

私が毎日のようにする洗濯の行為を、見守っているうちに、いろいろな動作に興味を持っていったのだろう。

2歳9ヵ月の今では、洗濯が終わったサインの「ピー、ピー、ピー」が鳴った時点で、「ママーせんたくおわったよー! 」と教えてくれるのはもちろん。洗濯ネットのファスナーを自分で開けて、床に出してくれる。私がやろうとすると、「じぶんでやるー! 」と怒られてしまう……。
ハンガーにかけたり、ピンチにとめるのは、効率的に乾かすためのママ流儀があるので、ここは息子の出番はお休み。

そして、いざ庭の物干し竿に干しに行くとなると、自分のサンダルを玄関に取りに息子は走る。晩秋から冬にかけては、庭に蚊や蜂が出てこなくなるので、子どもと一緒でも安心だ。息子は私が干す作業をしている周りをウロチョロ走って、ほとんど邪魔をしているようにしか見えないのだが、もしかするとママのボディーガードでもしているつもりなのかも!? しれない(笑)

2階の日当たりの良い旦那の部屋の手すりには、バスタオルやシーツを干すのだが、箱にしまってあるピンチを私に手渡すのが息子の仕事なので、「2個取って、もう1個取って」などとやりとりしながら、補佐役をこなす。

夕方に洗濯を取り込んでからが、息子のお楽しみの時間だ。

息子がピンチを外しやすいように、大人用や子どもの椅子の背に引っ掛けてやる。そうすると、ちょうどいい高さでピンチを押せて洗濯物が落下する。
新年にタオルの畳み方を教えてみたら、意外と上手に畳めたので、最近は毎日やっている。「タオルの端と端をこうやって合わせるんだよ。シワものばしてね。」と私が先に手本を見せて教えて、「はんぶんこ、もういっかい、はんぶんこ」と、二人で呪文を唱えるように畳んでいく。勢いあまってはみ出したら、私が「バックオーライ!」と言って、やり直しさせる。ママは厳しいのである。
息子用の大きなバスタオルは、収納の都合から私がくるくる丸めている。息子はまだできないので、「ロールケーキはできないから、ママやってー」とお願いされる。

靴下は、わざと家族分をバラバラに散らして、どれがセットになるかを見つけさせるゲーム感覚で手伝わせている。セットを見つけて手渡すと私がくるりと丸めるのだ。
一人でやるより、時間がかかるので、早く終わらせて夕飯づくりをしたい気持ちにかられるが、ここはガマンガマンと息子のやりたい気持ちに、のんびり付き合うことにしている。






2016年12月31日土曜日

どんなムードがお好き?

今年のうちに絶対行っておきたい場所があった。それは、祐天寺にある『ナイアガラ』という名のお店だ。
ひと足早いクリスマスプレゼントとして、息子が行きたがっていた場所へ連れて行くことに。

息子を驚かせるために、どこに行くかは内緒にして出かけた。Youtubeで映像を見せていたせいか、お店の外観を見て息子は「ナイアガラだ!」と、すぐに気づいたようだ。

そこは、息子が大好きな“汽車ムードのお店”のカレーステーション。

中へ入ると、昔ながらのブルーシートの向かい合わせの四人掛け椅子が並び、行先の看板があちらこちらに掛かっている。

店内をぐるりと一周するように線路が敷かれ、汽車がカレーを運んできてくれるのだ。なんと夢のあるお店なのだろう。子供ならずとも、大人もワクワクした気持ちになってくる。

網棚にのっていた駅員さんの帽子をかぶり、親子でカレーを待つ。

出発の声とともに、汽車がトンネルを抜け、自分の目の前に停車し、無事にカレーが運ばれてきたときの、ちょっと緊張しつつも、驚いた顔が忘れられない。
カレーは新幹線の入れ物に入っている。息子の大好きな汽車と新幹線がみごとなコラボをみせていた。その後、セットのオレンジジュースやデザートで注文していたソフトクリームも、みんなそれぞれ汽車に乗って運ばれてきた。そして、運び終わるとバックしながら汽車がまたステーションへ帰っていく姿もおもしろい。
その日は、食堂長のエプロン姿をしたかわいらしい女性店員さんがいて、発車のスイッチを押したり、来店記念の切符を切ったりして息子を楽しませてくれた。

祐天寺には、駅前にも格安なチェーン店のカレー屋さんもあるが、『ナイアガラ』は子連れだけでなく仕事中のサラリーマンがランチ時にふと一人で入ってくるようなお店だ。

きっと、汽車ムードが恋しくなるのだろうな。

子育てをしていると、ついつい怒ってしまいトゲトゲしたサボテンや鬼のようなムードになってしまいがちだが、のんびりとした旅情のある汽車ムードに浸ってみると、やっぱりこっちのほうが断然気持ちがいいよなーと反省する。

思わず近寄って休んでいきたくなるような、ほんわかおひさまムードも好きだ。

みんなそれぞれに、いろんなムードをまとって生きていて、世の中全体のムードも一人ひとりのムードがつくっているともいえる。

そう思うと、けっこうムードというのは重要なのかもしれない。
毎日を気分よく過ごすというのは、難しいがチャレンジしがいのあるテーマである。

2016年も残すところあと数時間。
「ことのは山房のポケット」と名前を変えてブログを休み休みながらものんびり続けてみた一年。息子も2歳9か月になり、子育ても手助けする部分よりも、見守る部分が増えてきた。

口を出し過ぎず、手を出し過ぎず、気分よく過ごすというのが来年の目標かな?そして、本物の汽車にも乗ってみたいな。久しぶりに新幹線に乗った旅もしてみたい。

今年も、ブログに遊びにきてくださったみなさまありがとうございました。
よいお年をお過ごしください。

いつまでたっても大人げないママの ことのは山房より
2016年12月31日








2016年11月12日土曜日

火について、親が教えてあげられること

11月のよく晴れた休日、息子と二人で第4回「鎌倉エネルギーカフェ」に参加してきた。今回は、鎌倉にある緑豊かな庭のある古民家「カジュ・アート・スペース」を舞台に、“クリまつり”と題してエネルギーのことをおいしく楽しく学べるとのことだった。

鎌倉エネルギーカフェの事務局をされている「きらくなたてものや」の日高さんとはライターの仕事でインタビュー取材させていただいたご縁があり、イベントに参加させてもらうことになった。

エネルギーカフェには、幼児から小学生くらいの子どもたちが家族で参加し、地元の常連の方も多いようだった。また、幼稚園やフリースクールなど、子どもの教育に取り組んでいる方も何人かいた。

今回のクリまつりのエネルギーカフェでは、衣・食・住の体験学習として、クリのイガを使った染めの体験、そして、クリごはんやクリ入りの豚汁、焼き栗といった自然の旬の恵みを料理を味わい、建築にも古くから使われ、水に強くじょうぶなクリの木材を使って、コースター作りもした。

化石燃料にたよらないという趣旨のもと、会場の庭では火をおこして染料を煮出したり、ご飯を炊いたりしていたので、火のまわりはとても暖かく和やかな雰囲気に包まれていた。白い煙は木の上まで高くのぼり、木漏れ日のまぶしい光と相まって、なんとも美しい眺めだった。そこに集う人たちまでいつのまにかいぶされていて、洋服にも香ばしい匂いがしみこんでいた。
また、「ロケットストーブ」というペール缶を利用した手作りのストーブの上に、直火のオーブンをのせて、焼き栗もしたので、おいしい匂いがあたり一面に広がって食事時が待ち遠しかった。
普段の暮らしでは、ガスの青い炎しか見たことのない息子だが、こんなふうにパチパチと燃える音がする本物の火を見せてあげることができたのは、とてもいい経験だと思った。

小さい子どもは、遊びに夢中になって火にうっかり近づいたりするので、大人は肝を冷やすが「火があったり湯気がのぼったりしてるところは、熱くてやけどしちゃうから、さわらないよ」と注意しながら、周りの人たちの見守りもあって、なんとかケガなく過ごすことができた。
親としては、火の危険性や怖さを教えてあげることももちろん大切だが、美味しい料理を作ったり、染物をしたりすることもでき、火の近くで暖まることもできるという恩恵を受けられることや、火を燃やし続けるには、薪をくべたり、うちわであおいだり、火の様子を目でよく見ながら、身体を動かし働きかけないといけないということを、大人の様子を見ながら学んでほしいなと思った。
2歳の息子はそこまで理解するのは難しいとしても、小学生くらいになれば、体験を通じて火についてより深く学べるのではないだろうか。

先日、東京デザインウィークのアート作品が燃えて、幼い子どもが犠牲になる痛ましい事故が起きたばかり。“電球の近くにオガクズがあれば、燃える危険性がある”ということを認識して注意できる人が、作品を作った当事者や関係者、そして実際に子どもを遊ばせていた親たちのなかにも、いなかったということのショックは大きい。

私たちが日常的に、当たり前のように使っている電気などのエネルギーはもちろん、火についても、親が子どもに教えてあげられることはいったい何だろう?そんなことも、あらためて考えさせられたエネルギーカフェの一日だった。