2011年10月2日日曜日

アイツはハーゲンダッツが本当に食べたかったのか?

鎌倉の海にはもう何度となく行っているのだが、その日はたまたま暑くて海でアイスが食べたい気分だったので、近くのコンビニでハーゲンダッツのクリスピーサンド(洋風モナカみたいなやつ)を買った。隣のレジに並んでいたヤンキー風なサーファーガールは、別メーカーのあんこ入り和風モナカアイスを買っていた。

海へ着いて腰をおろし、ハーゲンダッツのクリスピーサンドを箱から少しずつ顔を出しながら、ひとくち、ふたくちと食べ進めたちょうどその時、「バッサ」という音とともに、私のハーゲンダッツは見事に手元からなくなっていた。天功のイリュージョンか!?と思うような1秒くらいの出来事である。

最初は何が起きたのかわからなかったが、ハーゲンダッツを持っていた手にかすかな痛みが走った。人差し指から少し血がにじんでいた。あわてて指から出た血を口で吸いながら、ようやく状況が飲み込めた。トンビにやられたのである。

夕日に輝く穏やかな鎌倉の海の白波をじっと眺めながら、この一瞬の出来事を冷静に振り返っていた。トンビは食べ物を持っている人間を狙うとは聞いていたが、まさかハーゲンダッツのクリスピーサンドを狙うとは思わなかった。そして、あのヤンキーのお姉ちゃんも同じようなモナカアイスを食べていたのに、そっちではなく私のハーゲンダッツを狙ったのはなぜだろうとも考えた。トンビは量より質を重視するグルメ志向なのか?

おにぎりやパンなら、主食にもなりそうだが、アイスをトンビが食べてどうするのだろう?と不思議に思う。すぐにとけてしまうし、あんな甘いものを食べておいしいと思うのだろうか?

きっとトンビとしては、人間がおいしそうに食べていたものを獲物だと思い、とりあえず本能で狙ったのだろう。私に何の気配も感じさせず、真上から急降下して私の手元にあるアイスだけを的確に奪い去った正確なハンティング力には、尊敬の念すら覚える。野生の力をまざまざと見せつけられたように思った。

これまで人間が動物や自然に対して繰り返し行ってきた略奪に比べたら、私がトンビに奪われたアイスなどちっぽけなものだし、私をほとんど傷つけずにアイスだけを奪ってくれたトンビには頭が下がる思いだ。

そう、動物や自然は時に容赦のないことをするけれども、
本来は人間よりはるかに優しいものなのだ。

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