野毛山動物園のメスのアムールトラ「メイメイ」が2017年1月4日に老衰のために亡くなった。
息子にとって生まれて初めて見た本物のトラは、メイメイだった。自宅から一番近い動物園である野毛山には、季節ごとに動物たちに「元気かい? 」と、挨拶をするような気分でよく通っていたので、あのいつも見ていたメイメイがもういないというのが、なかなか信じられない。
私たち親子がメイメイに会ったのは、晩年の頃だったから元気に動き回っているというよりも、じっとしていたり、眠っていたりすることのほうが多かったように思う。
普段見ていたときには気づかなかったが、メイメイはお年寄りだったのだ。野毛山動物園で生まれて、20歳で亡くなったメイメイ。飼育下では15年が寿命なので長生きしたほうなのだという。野生を知らずに檻の中で一生を過ごしたメイメイ。メイメイの目には、私たち人間はどのように映っていたのだろうか? メイメイの訃報を受けてから、いろいろなことを考えながら過ごしていた。
息子が『かばくん』という動物園が舞台の絵本を読みたいとせがんで、寝る前に読み聞かせをしていたときに、そうだメイメイにお別れの挨拶に行こうと急に思い立った。
翌朝、家の庭に咲いている水仙の花を数本摘んで、オモチャを包んでいた青い包み紙を赤い紐で結んで持っていくことにした。お店で買った花よりも、なんとなく心がこもっている気がして。水仙の甘い香りは、凍てついた空気にも優しく、なにより美しかったメイメイにふさわしい花だと思ったのだ。
息子は、家から動物園まで大事に花束を手に持って行った。ベビーカーに乗っても離さず、坂道ではベビーカーから降りて、花束を持って長い長い坂を頑張って歩き切った。
空っぽの檻を見て、「メイメイちゃんいないねーねてるのかな? 」と息子。献花台に花を捧げ、遺影のメイメイちゃんを見て何かを察したのか、ちょっと寂しげな表情をしていた。遺影の前に座って、手を合わせて「メイメイちゃんありがとう、安らかにねむってね」と伝えることができてよかった。
メイメイがいたバックヤードのガラス張りの部屋には、飼育員からの寄せ書きや贈られた花とメッセージがたくさん置かれてあり、メイメイがみんなから愛され大切にされていたことが痛いほど伝わってきて、うれしかった。そして、本当にメイメイがもういなくなってしまったんだ、もう会えないんだという実感がわいてきて、私は寂しくてそこに長くとどまることはできなかった。
バックヤードの廊下には、メイメイが元気だったころの楽しげな姿が大きな写真で飾られているので、ぜひ多くの人に見てほしい。
メイメイの献花台は、野毛山動物園のトラ展示場横に1月22日(日)まで設置されている。
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