ばぁばが遊びに来たときに、お土産に岡山県産の種なしぶどうピオーネを持ってきてくれた。直径2センチはあろうかという、大粒のぶどうは、フルーツ好きな息子のためにと買ってきてくれた立派なものだった。
朝食やおやつのときに、大人が皮をむいてやり、喉に詰まるといけなので4等分くらいにして食べさせていたのだが、
今朝は、「ぶどう、じぶんでやる!」と言ったので、やらせてみることにした。
まずは、ぶどうを房ごと渡して、「ねじねじして取るんだよ」と見本を見せた。最初はよくわからず、力ずくで引っ張って、もぎとろうとした息子だが、ちょっとずつねじる手つきを覚えて、3個とも房からとることができた。
そして、ふたつ皿を用意して、手前に実を入れる皿、奥にむいた皮をのせる皿を配置した。
息子は、真剣な目つきで大粒のぶどうをしっかり手で持つ。いつもは、右ききなのに、なぜか右で実を持ち、左手で皮をむき始めた。
最初、どこから皮をむいていいのかわからず、実を転がして見ていた息子だったが、私が「おへそのところからむくんだよ」と教えると、「おへそー」とうれしそうに、声を出して笑いながら房がついていたくぼみの部分を発見して、そこからむき始めた。
息子はここ数日、私たちのむく姿をじーっと見ていたからだろう、指先を上手に使い、方向転換をしながら、まんべんなくきれいにむいていくので、驚いた。
意外と大人の手よりも、小さい子どもの手のほうが、ぶどうはむきやすいのかもしれない。
数分かかって、ようやくむけた緑のやららかな球体からは、おいしそうな紫色のつゆがしたたり落ちている。そのつゆは、息子のふくよかな腕をつたっていた。「おいしいジュースがこぼれないように、お皿の上でむくといいよ」と私は声をかける。
せっかく上手にむけたので、そのままかぶりつかせてやることにした。喉につまらせるのでは? と危惧していた私の心配はよそに、息子は少しずつかぶりついて、つまらせることなく上手に食べていた。
満足そうな息子の表情を見ていると、大人が子供のことを思って、先回りしてしまってばかりでは、息子の達成感や好奇心を奪ってしまうことになるのかもしれないと思った。
ちょっと無理そうかなと親が思っていることでも、自分から「やりたい!」と目を輝かせたときには、やらせてあげるようにしたい。
皮をむいた後のお皿には、ぶどうのおいしいジュースがいっぱい。最後に飲み干し、ぶはーっといい声をあげた息子の表情は、ビールを飲んだ後の夫の顔にそっくりであった。
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